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第4章:有望な技術(1)…廃タイヤのマテリアルリサイクル技術

はじめに

【廃タイヤリサイクル概況】
酸性雨、オゾン層破壊、地球温暖化など、今日の環境問題はかつて社会問題化した公害に加え、新たに地球規模で本格的な取り組みが必要な時代を迎えている。そのような中で、大量生産・大量消費されてきたタイヤも地球環境や省エネの観点から完全なリサイクルが求められている。

元々、ゴム製品はタイヤなど自動車での大量消費が特徴で、タイヤはゴム製品の76%を占めている。従って、ゴム工業における環境問題としては、廃タイヤの再利用がもっとも重要なテーマとされていた。

1996年の統計において、日本における廃タイヤのリサイクル率は93%もの高い水準に達しており、内訳は廃タイヤをセメントの原燃料にしたり工場のボイラーの燃料にする『サーマルリサイクル』が51%を占め、もう一度タイヤとして使用する『プロダクトリサイクル』が28%、そしてゴム製品として再生する『マテリアルリサイクル』が12%、残りの9%が『不明』となっており、その多くは野積みなどの不法投棄と考えられる。つまり、廃タイヤの処理はこれら3 種類の方法が一般的とされている。

[図4-1 利用分野別リサイクル状況(1996年)]

ただ、『サーマルリサイクル』は再生油・廃油との競合、セメント需要の減少から利用量は頭打ち、『プロダクトリサイクル』も新品タイヤとの価格差の問題から需要は減少傾向にあり、将来的には『マテリアルリサイクル』の成長が期待されている。

また、『マテリアルリサイクル』には廃タイヤを細かい粒子に粉砕し、再生商品とするための2次加工技術が必要とされるが、このような一連の技術は欧米や日本などの先進諸国で活発に開発・導入が展開されているところである。

 

【東南アジアでのリサイクル】
一昔前まで、自動車産業において東南アジア諸国は部品を安価に製造できる生産拠点としての魅力しか有していなかったが、1990年以降の工業化の発展に伴い、国民の生活が豊かとなり、近年では消費市場としての魅力も呈するようになった。特に、アセアン4ヶ国の自動車の販売台数は(タイバーツ暴落時は落ち込んだが)右肩上がりの成長を続け、マレーシアではモータリゼーションの基盤が形成され、タイでもその兆しが現れつつある(自動車一台当たりの人口で見ると、インドネシアが56.7人、フィリピンが40.4人に対し、タイは17.1人、マレーシア6.5人となっている)。また、二輪車に対する需要も高く、 ---日本以上に庶民の足としての人気が高い。しかし、大量消費は大量廃棄へと繋がることを意味し、その処分について注意を向ける必要が生じている。同時に、急激な経済成長は廃棄物の処理へ対応するだけの柔軟性を有しておらず、殆どの国では廃棄物の量に対する処分施設の能力や消費者の認識が追いつかず、環境問題として噴出しつつある。さらに、日本における廃タイヤの不法投棄は1割弱であるが、東南アジア諸国ではその比率がより高いものに達していると推察できる。

[図4-2 アセアン諸国における自動車販売台数推移]

Information resource:各国自動車工業会資料より

東南アジア諸国は先進諸国と比較すれば、概ねリサイクルに対する意識はまだ低く、環境問題の取り組みに対して発展途上となっている。また、先進国で処理できなくなった産業廃棄物が東南アジア諸国に不法輸出され、そのまま放置されてしまっている現実もある。しかし、将来的にこのような問題は看過できるものではなく、確実に先進諸国と同様の廃棄物処理基準が要求される事になる。

そこで、ここでは廃タイヤの『マテリアルリサイクル』に焦点を当て、東南アジア諸国における廃タイヤ処理に寄与し、且つ二次加工品の製造が事業として現地で成立する可能性の高い日本の技術を紹介している。リサイクルゴムの二次加工品としては様々な商品が開発されているが、ここではゴムブロックやゴムマットなど、舗装整備に使用されるものに焦点を当てている。

そして、この分野における日本の中小企業の廃タイヤリサイクル技術が、ここで取り上げているパイロット的なビジネスモデルによって、これまでなおざりとされてきたアジア諸国における環境問題に寄与でき、アジアにおけるデファクトースタンダードとして確立されると同時に、事業として成立させることによって永続性を追及できればと期待している。

 

日本における廃タイヤリサイクル事情

【廃タイヤのルート別発生数量】
1998年、日本国内の廃タイヤの総発生量はタイヤ本数で9,900万本、重量で97万5,000トンに達している。その内の約80%がタイヤ取替時に、約20%が廃車時に発生しており、比率そのものは過去からあまり大きく変化していない。また、廃タイヤの発生量そのものも、1995年まで右肩上がりで増加傾向にあったが、近年は横這いの状況が続いている。

[図4-3 廃タイヤルート別発生本数推移]



[図4-4 廃タイヤルート別発生量推移]

【廃タイヤのリサイクル状況推移】
日本国内では、『サーマルリサイクル』による廃タイヤの処理が高い比率であったが、近年はその成長が頭打ちの状況にある。しかし、それに変わる有効なリサイクル方法が確立された訳ではなく、各リサイクル手法の比率そのものに大きな変化は見受けられない。『マテリアルリサイクル』にしても、国内における処理コストの高さ等の問題から、ドラスティックな成長を遂げるまでには至っていない。ただ、日本における廃タイヤのリサイクル率は90%前後と高い数字を維持しており、さらに夫々の処理手法が切磋琢磨し、より環境に優しく、より安価なリサイクル技術が日々開発されている。対して東南アジア諸国における廃タイヤのリサイクル率は、日本のそれよりも遥かに低く、処理するための選択肢も少ない。

[図4-5 廃タイヤのリサイクル状況推移]

廃タイヤリサイクル技術

ここでは、『マテリアルリサイクル』に関する技術だけを取り上げ、どのような二次加工品を製造できるのか紹介する。

【代表的なタイヤゴムの粉砕技術】
廃タイヤは各種破砕機でやや大きいチップ状に、そしてさらに細かく粉砕して繊維、スチールコード、異物を除去し、ゴム粉として再利用されている。廃タイヤの粉砕については、以下の2つの手法が一般的となっている。

【主な二次加工品】
前述の粉砕されたゴム粉の再利用の方法としては、

 の2種類が挙げられる。

 

 

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