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FWAとはFixed Wireless
Accessの略で、日本では加入者系無線と呼ばれている。
このFWAはオフィス・家庭等と電気通信事業者の回線設備との間を、直接無線により接続して、大容量の情報通信を可能とするシステムで、準ミリ波帯・ミリ波帯(22GHz帯、26GHz帯又は38GHz帯)を使用する新たな無線アクセスシステムとして注目されている。この技術は低コストでネットワークを構築可能であるほか、事業者の参入コストを大幅に引き下げる可能性があると期待されている。
日本では、10年ほど前に同サービスの提供が一度試みられたことがある。ただ、その時はチップなど専用機器のコストが高かったことと、通信の信頼性の面で有線系より弱かったこと、さらに高速大容量のワイヤレス通信に対するニーズが今ほどはっきりしていなかったことなどから大きな市場に育つには至らなかった。しかし、軍事用に使用されていた10ミリ波帯が開放され、欧米で普及することによってチップの価格が下がり、機器の価格も劇的に安くなっていった。また、市場でも高速化に対する需要が高まり、FWAの立場が見直されることになった。米国では、WinStar社が同技術によって1万5,000以上の顧客を持ち、確固たるポジションを形成している。また、東南アジアも含め、世界全体でFWAへのニーズが広がる傾向が現れている。そのため、日本でも郵政省がFWAのための無線局に係る関係省令を1998年12月に公布・施行した。また、これに合わせ、同システムの導入に関する基本的方針等を同年12月に公表した。
ここでは、日本で使用されているFWAについて説明する。
現在、日本の事業者に許可されているFWAの仕様は下記の通り。WLANと違い周波数ブロックは割り当て制のため、各自業者間で電波干渉が起こることはない
[FWAの仕様]
FWAの主な仕様は下記の通り。用途に合わせて2つの方式に分類できる。コスト的には、専用線の半額から1/3程度の料金でユーザーに高品質のネットワーク環境を提供できる。
[FWAの概念図]
FWAの応用範囲は広い。現在は立ち上げ期のため、機器コストやランニングコストが高く、主に企業向けにしか提供されていない。しかし、将来的には各家庭に直接供給することも可能とされている。
FWAは基本的に有線の専用線と同様のパフォーマンスを提供できる。有線の専用線と比較した場合の特徴は、
<メリット>
ランニングコストが安価
大規模な回線敷設が不要なため、ネットワーク構築期間が短縮できる
高速かつ大容量に双方向データ伝送が可能
電波干渉がない
柔軟なネットワーク構築が可能
<デメリット>
機器価格がまだ高価
光の性質に近く強い直進性がある
降雨や降雪、雲などの水の粒による減衰を受けやすい
現在普及している有線の専用線が、無線に取って代わられることはない。将来的には、両者の特徴とユーザーの利用環境を勘案し、共存することになるだろう。
[事業者リスト]
日本でFWAを提供しているプロバイダーは下記の通り。ただ、これらは無線免許を取得している事業者であって、商用サービスをまだ提供していないものも含まれている。詳細は、各社のホームページを見て欲しい。
BroadBand.Com
中国、四国、九州
Cross Wave Communications
関東、東海、近畿
日本テレコム
ODN
AIRLINE; 沖縄を除く全国
KDD WinStar
InterSky, @F-ON; 関東、東海、近畿、九州、沖縄
New Century GlobalNet
SkyFiberNet; 関東、東海、近畿、九州
NTTコミュニケーションズ
Arcstar
Air Access; 沖縄を除く全国
大阪メディアポート
近畿
PSINet
PSINet
Wireless Access; 関東、近畿
TTNet
関東
ソニー
Bit-drive;
関東、東海、近畿、九州
KDDI
関東、九州
中部テレコム
東海
フュージョンコミュニケーションズ
沖縄と九州を除く全国
機器に関しては、日本無線や三菱電機、東芝などのメーカーが製品開発をしている。現在は小型化が進み、パラボラアンテナの直径は30cm以下、屋内ユニットも50cm(W)×35cm(L)×9cm(H)程度にまでなっている。
[FWA基地局数]
日本での、FWAの商用サービスにおける歴史はまだ浅い。しかし、基地局数は着実に伸びており、2001年以降は急激に増加すると予想される。
Information resource: 総務省
[Bit-driveの場合]
現在最も普及しているのが、ソニーが提供するBit-driveである。アクセスポイントが多いことや、サービスの充実・品質の高さが人気を呼んでいる。その中でも、ソニーとFWA技術と京セラコミュニケーションシステムとランゲートが提供するシステムを組み合わせた"e-room"というインターネットマンションは特筆すべきである。システムとしては、FWAと2.4GHzWLANとTV/LAN共聴システム(Digital Way)という3つの技術を組み合わせたもので、マンション居住者へ安価な高速・常時接続のインターネットサービスを提供している。現在はダイニチが所有するマンションへ同システムが提供されており、月額料金は2,000円程度に設定されている。詳細は http://www.e-room.co.jp/を参照。今後は、このようなマンションデベロッパーとの提携により、効率よくサービスを提供する事業が増える傾向にある。だが、現状では機器価格の安価なWLANが有利である。
[New Century GlobalNetの場合]
New Century GlobalNetはビルオーナーとパートナーシップを締結することにより、ユーザービルに全く新しい価値を提供し、入居率の向上を図っている。
コスト的には、FWAは有線より安価なサービスを提供できるが、方式によって価格差が生じる。下記表は1.5Mbpsでの月額料金を比較したものである。 P-Pの場合、コストメリットは10万円程度だが、P-MPでは大幅にコストを下げられる。ただ、P-MP内でコスト差が如実に現れている。これは、回線共有数の設定によるものであり、スループットに影響する。そのため、FWA事業者が提供するP-MPタイプは、表示速度が同じでも中身に差がある。利用者はこのことを理解した上で、事業者や回線速度を選定する必要がある。