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地雷とは?

まえがき

南北戦争時に登場した地雷は、防衛兵器として使用され続けてきた。それは、拠点防衛のためであり、敵を一定地域に誘い込み、そこで他の兵器を使って壊滅しようとするために。だが、あまりにも無秩序に地雷が使用されたため、1980年の国連会議において「特定兵器使用禁止・制限条約の議定書II(1996 年ジュネーブ) で定められたルールに従って、規則性をもって敷設され、地図、目印、記録が作られねばならない」と定められ、地雷を埋設した者はその除去にも責任を持つことを指示している。しかし、それが実行されることは稀であり、無秩序な地雷使用は続けらてきた。また、民族紛争などの内戦において、その効力は一切発揮できなかった。

地雷の種類

地雷はその作動形式から「対戦車用」と「対人用」に大別される。対戦車用地雷(AT: Antitank Landmine)には、通常約5kgの爆薬が詰められており、100kg以上の圧力が加わると起爆する構造となっている。次に対人地雷(AP: Antipersonal Landmine)だが、これは更に複数の種類に分けられる。大局的には、破砕性地雷と爆風地雷だが、以下にその概要を記載する。

[破砕性地雷]

このタイプの地雷は、中に榴散弾や金属片、鋼球が詰められており、爆発するとそれら詰物が高速で飛散、人体に破裂性の損傷を負わせるというもの。有効射程範囲は半径10~15m程度。この地雷は大量の金属を使用しているので、探査・破壊は比較的容易。さらに、この破砕性地雷は以下の3タイプに分類される。

 指向性地雷

このタイプは、狙いを向けた一方向へ弾丸を発射するもので、起爆にはワイヤーによるトラップや、遠隔操作が使用されている。飛散距離は200mにまで及ぶこともある。

 棒状地雷

これはパイナップルのような形をした地雷で、地面から突き出た棒に取りつけられる。パイナップル状のケースは金属で作られており、爆薬が爆発することによりケースが破砕され、高速に飛び散るというもの。

 飛躍地雷

このタイプの地雷は地中か地表に設置されている。起爆により、地雷本体がある高さ(1m程度)まで跳躍し、その後空中で爆発するというもの。その特徴から、空中炸裂型地雷とも呼ばれている。

[爆風地雷]

地雷の発見・除去が最も困難であるのが、このタイプの地雷。通常は地中5~10cmに埋設されており、0.5~10kgの圧力で作動する。爆薬量は 20~240g程度。外装はプラスチックやゴム、ベークライトなどの材料が使用されている。金属部分は点火装置、スプリング、撃針だけ。

 

地雷はその構造が簡単なことから、発展途上国においても大量に生産することが可能であった。そのため、地雷の価格は3~30ドルと大変安価となり、世界中で最も使用される兵器として普及した。セネガルやアンゴラでは、豊富な天然資源のダイヤモンドを資金源として、大量に地雷が購入されている(ダイヤモンド 1個=対人地雷1,000個)。
通常、地雷は人力によって地中や地上に設置されるが、より効率化を図るために、空から飛行機やヘリコプターによって大量にばら撒く方法も採られるようになっていった。

対人地雷の使用目的

 対人地雷は、人を殺すことよりも負傷させることに重点を置いて開発されている。そのため、爆薬の量は致死量に至らない程度に調整されている。
また、地雷を使用する主な目的は、防衛手段や精神的打撃/経済的打撃を効率よく与えるためである。つまり、敵兵を一人殺すより、地雷により重傷を負わせることのほうが、戦略的優位に働くことを意味している。


地雷の埋設状況

過去40年間、地雷は世界の多くの場所で様々な紛争に使用されてきた。しかし、あまりにも無差別に使用されたため、正確な埋設数量というものは誰も把握できていない。当初の見積もりでは、6,000万~2億個までと大きな幅があった。下記データは国連が発表しているもので、代表的な資料として一般に使われているデータである。

国別埋設状況

【国連データ・ベース】


Information resource: 国連地雷除去データ・ベース

【Hidden Killer98ケース・スタディー・データ】


Information resource: U.S. Department of State, Bureau of Political-Military Affairs
(Hidden Killers)

 

地域別埋設状況

【国連データ・ベース】


Information resource: 国連地雷除去データ・ベース

【Hidden Killer98ケース・スタディー・データ】


Information resource: U.S. Department of State, Bureau of Political-Military Affairs
(Hidden Killers)

国連の報告書では、世界中に約1億1.000万個の地雷が埋設されているとしている。日本の外務省もこの数字をフォローしている模様。しかし、1998年に米国国務省の"Hidden Killer"では、5,970万~6,940万個と見積もられ、現状では最も正確な数字ではないかと思われる。この見積もりの背景には、地雷原に対する知識の高まりがある。例えば、エジプトには2,300 万個の地雷が埋設されているとしていた。だが、その数には全ての弾薬も地雷としてカウントされていたため、実際には過大に見積もられる結果となっていた。正確な調査では、西部砂漠に150万個、東部国境付近に50万個、合計200万個という数字が算出されている。
以上から、ここでは現在世界に埋設されている地雷は、6,000万~7,000万個という数字を前提として考えたい。
ただ、埋設地雷数の変動が被害の大きさを決めるわけではない。そこに存在するという事実が問題なのであって、この数字変動による地雷の捉え方はいささかも変わらない。


対人地雷生産状況

1988~1993年までのデータでは、全世界の対人地雷の生産総数は、年平均で500万個程度。近年は、その数量は500万個以下であると予想されている。下表は、1996年と1999年の対人地雷の生産国リストである。現在、ミャンマー、北朝鮮、イラクを除くほとんどの対人地雷生産国は、「輸出の禁止」や「一時停止」などの声明を公式に表明している。

地雷生産国リスト

Note)
アメリカは2006年に対人地雷全面禁止条約に加入することを目指し、国防省が対人地雷の代替兵器としてRADAMと呼ばれる新しい地雷システムの生産を検討している。これは現存の対人地雷5個と対戦車地雷7個をひとつの缶に詰めるものである。このような地雷代替兵器開発計画に対し、アメリカは1999年会計年度に2,100万米ドルを支出しており、会計年度2001年には9,400万米ドルまで増加が見込まれている。

 

 

主な地雷除去活動

NGOによる主な地雷除去活動マップ

Note) 

 HI: Handicap International (France and Belgium)

 HALO: Halo Trust (UK)

 MAG: Mines Advisory Group (UK)

 MCPA: Mines Clearance and Planning Agency (Afghanistan) 

 NPA: Norwegian People's Aid (Norway)

上記は、主だったNGOによる活動地域をまとめたものであり、他にも国連組織などが除去活動を実施している。また、中米における地雷除去活動では、OAS: The Organization of American States が活動を行っている。

 

 

被害状況

概要

対人地雷による死傷者は毎月2,000人以上にのぼり、世界に25万の負傷者がいると推定されている。また、地雷除去作業における事故も増加しており、「1,000から2,000個の地雷を除去する度に1名の犠牲者が出ている」とされている。1996年までに、PKO活動における被害のみで、203名の負傷と60名の死亡が確認されている。

主要な地雷埋設国における被害率


Information resource: 赤十字国際委員会(1996)

 

地雷による被害者分類


Information resource: 赤十字国際委員会(1996)

 

治療を受けるまでに要する時間


Information resource: 赤十字国際委員会(1996)

 

義足と治療費

大人の場合、義足の取り替え周期は3~5年。子供の場合は成長に合わせて交換するため、6ヶ月周期。
被害国で使用される義足の費用は125ドルほどで、その他に治療費や入院費が必要となる。また、輸血において、他の原因による負傷に比べて2~6倍の血液を必要とする。一般に途上国の場合、一人当たり3,000ドルの費用が治療に必要と言われる。以下に、参考資料として主な被害国のGDPデータを掲載する。

 

主な被害国のGDP

 

主な地雷対策活動援助国

【地雷問題に対する先進17ヶ国の地雷関連資金援助額(1999年)】

 Information resource: ICBL(LM Report 2000)

 

 

地雷の戦略的価値

現在、地雷の戦略的価値は如何なるものか?近年、各国軍事機関は自動制御付きの地雷により、人道的立場からの安全性を主張し、その使用を正当化している。自動制御付きの地雷は一般にスマート地雷と呼ばれており、一定期間が経過すると自己破壊または爆発しないように設計されている。つまり、地雷が持つ戦略的価値は現在も有効であり、今後も維持されるものと考えられる。
多くのNGOや反地雷活動を挙げている国家は「地雷ゼロ」を目指しており、このような技術に対する批判は大きい。ただ、現実的に38度線や一部の中東国家のように、国際的ルールを厳守できない国家が存在し、かつ周辺国の安全に対して脅威を与える可能性がある限り、地雷は効果的な手段として必要である。また、そのような国家が、制御装置の付いていない地雷を、無差別に大量にばら撒く能力があることも問題である。結論として、地雷の戦略的有効性を無にしない限り、地雷は今後も戦略的価値を維持しつづけるであろう。



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