HONE >> BIZ IDEA >> Mine Detector>> 地雷除去の現状


地雷探知

地雷探知方法

現在、地雷探知に使用されている主な方法は以下の2つ。

 金属探知機による探知

 火薬の匂いを判別する地雷探知犬

この他に、最近では音波やレーダーを使用した探知機の本格普及が始まろうとしている。

金属探知機

最も一般的な方法が、この金属探知機を用いた手法である。この方法が広く浸透した背景には、他に地雷を探知する機器が無かったことと、機器コストが安価だった事がある。ただ、この方法は信頼性に欠けるという、重大な問題を有している。前述したように、地雷に使用される金属は極端に少ない。そのため、金属探知機の感度を上げなければ、地雷を発見することはできない。だが、それは地中に埋まった釘や鉄片など、全ての金属に反応することを意味する。つまり、金属探知機を使用するディマイナー達は、地雷原からすべての金属片を除去しているという事になる。効率性の点では最悪である(2人1組で1日に調査できる範囲は3~6㎡程度)。また、カンボジアの土は高い金属含有量の鉱石ラテライトが含まれており、金属探知機が全ての地雷原でオールマイティーでない問題もある。
さらに、金属探知機は音の変化によって、金属の有無をディマイナーに知らせるものである。そのため、音の変化を聞き分けるには熟練した経験が必要となる。

地雷探知犬

これは、犬の嗅覚を利用した方法で、考え方としては麻薬探知犬と同じである。特別に訓練された探知犬は火薬の匂いを嗅ぎ取り、地雷の場所を判別することができる。この方法は金属探知機よりも信頼性が高く、土壌成分の影響もない。反面、維持コストが大変高いため、大量に導入することができない。その費用は、訓練費を除いても、維持費だけで毎年35,000ドル程度必要となる。通常、訓練犬が火薬の匂いを判別できるまでには1年程かかる(訓練後は、30cm程度の深さまで嗅ぎ分けられる)。サプライヤーサイドとしても、それほど多くの地雷探知犬を訓練することは不可能であり、需要の供給のバランスがとれていない。

Note)
カンボジアでは、スウェーデンから提供されている犬が地雷探知に使われている。

処理状況

現在、約5千人のディマイナー達が地雷探知・除去の作業を行っている。しかし、上記方法によって処理できる地雷の数は年間10万個程度にしかならない。と同じに信頼性の低さから、処理中の事故も発生している。コスト的にも、地雷1個を除去するのに300~1,000ドルもかかってしまい、十分な処理ができない状況にある。


その他の探知方法

草原などでの地雷探知・除去

まず、ポピュラーな地雷除去の方法に、OSAのガイ・スレイヤー氏(クレイモアという地雷の開発者)が開発した"スネーク"という方法がある。これは装甲車に鉄の棒を取り付け、地雷原を走破して地雷を爆破させるというもの。広いフィールドで短時間に地雷除去を行えるという特徴有しているが、100%の除去保証ができない。

次に、地雷処理における市場では、現在南アフリカが高い実績と信頼を持ってる。特に、Armament Corporation of South Africa Limited (アームスコー・南アフリカ国営兵器公社)が持つ対地雷用装甲車のパフォーマンスは世界トップレベルであり、世界中から高い信頼を得ている。彼等の販売してしている装甲車は底が船形に傾斜しており、地雷の爆風を逸らす特徴を持っている。
そして、同社の孫会社に当たるメカム社が、その技術を使用した地雷探知・除去技術の開発を行っている。同社が販売している商品としては、装甲車に鉄の車輪を取りつけて強制的に対人地雷を爆破するものや、アームで機械的に地雷を掘り起こすもの、装甲車の先端に多数のセンサーを取り付け、地雷原に自動的にマーキングする方法を採用したものなどがある。と同時に、彼等は地雷探知犬や吸着分析法などの方法も組み合わせている。同社は、1991年から1998年までの間、ボスニアやモザンビーク、アンゴラなどで、通算88個の対戦車地雷、21,595個の対人地雷、1,007個の判別不能な爆発物を処理している。また、ドルビー社という会社は、1日に約200kmの道路の地雷除去が可能な「チャービー・システム」を販売している。このシステムはイギリスとフランスが採用し、ボスニアで成果を挙げた実績を持っている。(1999年には、アメリカ軍も同システムを購入している)

ただ、これらシステムは広大な場所での使用に限定されており、街中やジャングル、農村部での使用は困難である。


研究開発中の技術

現在、世界中で地雷探知/除去のための新たな技術が開発されている。下記はその主なものである。

ミズーリ大学

ミズーリ大学の研究者達は、地雷除去のために特殊な弾丸を使用した地雷探知システムを研究開発している。これは、地上約100mを飛ぶヘリコプターから特殊な弾丸(実験では30mm弾を使用)を地雷原へ発射するというもの。この弾丸は地面に潜り込んで4kwのレーダーパルスを発する。その電波は半径15m以内にある地雷を探知し、その位置をヘリコプターに知らせる。これにより、作業者は地雷原へ入ることなく、安全に除去活動できるという。

米エネルギー省国立サンディア研究所

米エネルギー省国立サンディア研究所モンタナ大などから構成されるグループは、"ミツバチ"を使った地雷探知の研究開発を行っている。理論は、ミツバチの帰巣習性を利用したもので、屋外に放たれたミツバチが蜜や花粉を探している間に付着した物質の成分を分析し、TNT火薬などから空中に蒸発したわずかな成分を発見するというもの。また、ミツバチに極小のマイクロチップを装着し、飛んだ場所を追跡できるような研究も行われている。

米QM社(Quantum Magnetics)

QM社は航空会社向けに爆発物検知装置を開発している企業。現在、彼らは地雷探知の為に、パルス波を使用したシステムの開発を行っている。理論としては、地面に照射したパルス波から得られ特有の信号をRF受信器によって検出、データを解析することによって爆発物と他物質の磁気的指紋を検出するというもの。ボスニアなどで実証試験を重ねている。

千葉大学

千葉大学は、ロボット技術を利用した地雷探知機「COMMET-1」を2000年1月に完成した(世界初)。このロボットはアルミニウム製で、6本の足を持つ巨大なクモのような形をしている。作業者は遠隔操作によりロボットを操作、地雷探知には金属探知機を各足に使用しているが、将来的にはGPSやアレイ磁気センサー、マイクロ波地中レーダーを搭載する予定となっている。このロボットは地雷を発見するとインクによって地面にマークを付けると当時に、コンピューターが自動的に地雷マップ作る。地雷の発見が主な目的である。
このような、地雷探知にロボットを使用するという方法は、他でも開発が進められている。日本では、東京工業大学が同じようなクモ型地雷探知ロボットを研究開発している。
また、米国では、マサチューセッツ工科大学(MIT)の人工知能研究所からスピンオフしたISロボティクスというベンチャー企業も、ロボットを利用した地雷探知の研究開発を行っている。彼らのコンセプトはユニークで、いくつもの小さなロボットが草むらを縦横無尽に駆け巡るというもの。個々のロボットには、金属探知センサーと、それによって検出されたものを拾い上げる磁石が搭載されている。ロボットは自立型の知能ロボットで、自分で判断しながら障害物を発見し、自動的に拾い上げる。

九州大学

九州大学は無人の飛行船を使用した地雷探査システムの研究開発を行っている。飛行船は数メートルの高度を1m/secで飛行し(X-Y軸方向)、渦電流によって地雷の探知を行う。地雷を探知したら飛行船からインクを落とし、マークを行う。また、GPSを搭載することにより、風による影響を自動補正する配慮がされている。
実証試験では、飛行船の全長は5mと巨大なものになる予定。この飛行船の製造に当たっては、ロシア企業が協力することになっている。

オーストリア、シーベル社

地雷探知機と関連機器を製造しているオーストリアのSchiebel社は、上空から地雷を探知できる無人/リモコン式ミニ飛行機『CAMCOPTER』の開発を行っている。

オランダ、国際宇宙探査地球科学機構

国際宇宙探査地球科学機構(ITC)は、空中浮揚型の地雷原遠隔探知システム『airborne remote-sensing minefield detection system』の開発を行っている。本システムはルクセンブルク、スウェーデン、英国、ポルトガル、ベルギー、ドイツ、ノルウェー、オランダによる大型の共同国際プロジェクトであり、欧州委員会、ベルギー、ドイツ、ルクセンブルク、英国、ポルトガルなどの国々とITC により資金が提供されている。


この他にも、"匂いセンサー"や"赤外線"などを使用した地雷探知技術の開発がある。


技術研究開発への資金援助

地雷除去に関する技術研究開発への資金援助

 アメリカ合衆国
  1999年会計年度に 1,820万ドル、1995-99年の累積6,360万ドル

 スウエーデン
  1999年に110万ドル、1994-99年の累計約2,360万ドル

 ベルギー
  1999年に140万ドル、1999年までの累計406万ドル

 英国
  1999年分不明、1994-98年の累計 110万ドル

 カナダ
  1999年に170万ドル、1998-99年の累計270万ドル

 オーストラリア
  260万ドル(1998~2002年)

 欧州連合
  1999年に1,230万ドル、1992-99年の累計約3,030万ドル

Information resource: ICBL(LM Report 2000)


国際的取組み

1980年、特定通常兵器使用禁止制限のための国際条約として、CCW(The Convention on Prohibition or Restrictions on the Use of Certain Conventional Weapons Which May Be Excessively Injurious or to Have Indiscriminate Effects)が策定された。これは、「地雷は軍事的対象物だけに使用され、遠距離からまかれた地雷は、それらの位置をはっきり記録しない限り使用してはいけない」と明記されている。ただ、この条約は国際紛争だけに適用され、内戦に対しては効力を発揮しなかった。その後、1996年におけるCCW修正会議では、CCWが内戦にも適用されることが確認された。

そして1999年のオタワ条約で、地雷の製造、使用、輸出、蓄積の包括的な禁止が、国際法として力を発揮できるようになった。しかし、アメリカ/ロシア/中国といった大国が条約を批准していないということが問題視されている。
また、アンゴラとギニアビサウ、セネガルが調印後の1998年に対人地雷を使用している事実がある。その他にも、1997年以降にジブチ、ソマリア、ウガンダ、コロンビア、アフガニスタン、ミャンマー、スリランカ、グルジア、トルコ、ユーゴスラビア、レバノン、コンゴ民主共和国、エリトリア、スーダン、カンボジア、タジキスタンで地雷が使用された可能性がある。


地雷探知技術開発への見解

現在、地雷探知/廃棄に使用される技術/方法は、第2次世界大戦期と大差ない。そのため、ディマイナーによる地雷除去作業は非効率的なもので、多くの点で効果的ではない。また、これまでに多くの技術が研究開発されてきたが、「安全性」「効率性」「コスト性」の全てを実現させた方法は実現されていない。ただ、現在普及しようとしている幾つかの技術は3つの要求を満たそうとしている。そのため、「新たなハイテクを使用した技術が必要なのか?」といった議論がある。1999年5月にモザンビークで行われたオタワ第1回会議でICBLは、「地雷除去の技術と機器の研究と開発に多大な資金が注ぎ込まれ、その結果現地で今すぐ必要な資金に限度があることは問題である。ICBLは各国政府に対し、従来の地雷探知、除去方法を支持し、実績で立証された従来技術に更に大きな資金を割り当てるよう呼び掛ける」と言及している。
この事業プランの基本コンセプトも、そのことを鑑みた結果辿りついたものであり、この点ではICBLと意見を同じとしている。



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