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第3章:マレーシアを起点としたパイロット的ビジネスモデル

マレーシアを起点としたパイロット的ビジネスモデル

国が環境問題を考慮し、持続可能な開発を達成するには、グローバル・パートナーシップが必要であり、それは北の先進工業世界と南の発展途上世界の間での新たな形の関係を築くことが必然的に求められる。事実、往々にして環境問題に対して有効な技術を積極的に開発し、経済活動の中で活用しているのは欧州、北米、日本の先進国となっているが、この技術がグローバル・パートナーシップを通じて発展途上国の環境問題是正に寄与している例は少ない。そこで、ここでは企業間提携を通じたグローバル・パートナーシップを構築することにより、日本の中小企業のリサイクル技術がアジア諸国における自動車関連の循環型社会形成に寄与するための効果的な形態について言及している。つまり、リサイクル事業において日本の技術優位性がアジア諸国の劣位を補い、事業として現地の環境問題是正に寄与することを狙いとしている。

これまで、企業のコスト性追求から、バーゼル条約のもとに日本の使用済み自動車から出る鉄屑を中国に輸出したり、フィリピンへ古紙を輸出し、現地で再生素材とするなどの形態での事業は行われていた(図3-1)。しかし、これはパートナーシップと呼べるものではなく、日本企業の利害が優先されてしまい、現地の循環型社会形成には何ら寄与することがなかった。むしろ、一部の杜撰で悪質な業者は、中国やフィリピンを産業廃棄物の最終処理場として捉え、資源ゴミの中に医療廃棄物を混入させ、国際問題に発展したケースさえある。

[図3-1 コスト性を追求した業態]

 

有害な廃棄物の国境を越える移動は1970年代から欧米諸国を中心にしばしば行われてきた。1980年代に入り、ヨーロッパの先進国からアフリカの開発途上国に廃棄物が放置されて環境汚染が生じるなどの問題が発生し、なんらの事前の連絡・協議なしに有害廃棄物が国境を越えて移動し、且つ最終的な処分の責任者の所在も不明確であるという問題の存在が明らかとなった。これを受け、一定の廃棄物の国境を越える移動等の規制について国際的な枠組み及び手続等を規定した「有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約」が作成された。

日本は米国、東南アジア諸国等との間でリサイクル可能な廃棄物を資源として輸出入しており、条約の手続に従った貿易を行うことが地球規模の環境問題への積極的な国際貢献となるとの判断の下、1993年9月17日に同条約への加入書を寄託し、同年12月16日に日本について効力を生じている。上記業態はこのような枠組の中で構築されたものであるが、先進諸国の身勝手な解釈との批判もある。

日本の利害を優先した業態とは異なり、ここでは、各国が廃棄物の国内処分を促進することを前提とし、叩き台となるパイロット的ビジネスモデル案を提示している。全体的な構図は図3-2のような形であり、前章の分析でアドバンテージを持っているマレーシアへ、日本の中小企業が開発したリサイクル技術を提携によって導入し、現地においてリサイクル、二次加工品製造・販売を事業として成立させることを目指している。提携に関しては、日本の中小企業は当該リサイクル技術から製造されたあらゆる製品より、「継続的なロイヤリティ」を得ることが妥当としている。また、シンガポールのような小国では規模の経済を享受することが困難なため、法的制限が許す上では、陸続きの隣国を同一市場として捉えている。
そして、ここでの論点の中心は、地球環境を守るというモラルから出発しているのではなく、事業として成立させ、競争力を発揮することにある。

さらに、ここでのビジネスモデルをほぼそのままの形で、言語、民族、文化を共有する中華圏、アセアン圏、インドと言った国への水平展開できるものに仕上げ、日本のリサイクル技術がアジア諸国の循環型社会の形成に大きく寄与させることを最終的な目標としている。

ただ、アジア諸国に受け入れられるには、日本のリサイクル技術による二次加工製品がバージン素材と競争できる品質と価格を実現できるようでなければならない。そして何より、二次加工品に対する長期のニーズの存在が必須である。そこで、次章以下では、当該ビジネスモデルの考え方と整合性を得ることのできる日本の中小企業の技術として、『廃タイヤのマテリアルリサイクル技術』と『シュレッダーダストのリサイクル技術』の2つを紹介している。

[図3-2 自動車関連のリサイクル業におけるパイロット的ビジネスモデル案]

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