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まえがき

数年前まで、インターネット後進国であった韓国だが、ADSL等の爆発的普及により短期間でIT先進国入りを果たし、IT産業発展の世界的モデルにまで昇りつめた。韓国の実績は、これからIT最先端国を目指す日本や、20年後に先進国入りを目論んでいるマレーシアにとって貴重なケーススタディーとなりうる。ここでは、韓国のIT産業発展の概要と、日本・マレーシアとの比較分析をする。

 

韓国のインターネット成長

1998年までは、韓国は確実にインターネット後進国であり、インターネット普及率はマレーシアのそれとほぼ同じ水準で推移していた。
だが、1998年以降、韓国のインターネット人口は加速度的に増加、翌年には日本をも上回るIT先進国となった。そして今では、シンガポールをも追い越す勢いで成長を続けており、韓国がアジア一のネット先進国となることは確実視されている。また、金大中大統領が2003年までに全国民がインターネットを利用するという目標を掲げたが、それもほぼ計画通りに実現される可能性が高い。

 


(2000年は11月時点のデータ)

 

これほどまでに韓国のインターネット事情が劇的に改善された要因として、下記項目を挙げることができる。

 ゲーム主体のPC房・インターネットカフェがインターネット人気を高めた

 高速利用を重視した韓国政府のIT政策が成功した

 競争事業者が電話でなく、ADSLなどの新たなインフラ整備を積極展開した

 集合住宅に集中的に提供した

 専用線などの回線コストが低廉だった

 無料電話、インターネット放送などのブロードバンドを生かす新種のサービスが提供された

まず、高速インターネットの需要が増えた理由として、PC房と呼ばれるインターネット・カフェの存在がある。このPC房は専用の高速回線でプロバイダーと接続され、ネット対戦ゲームやデータのダウンロード、動画の再生など高パフォーマンスのインターネット環境を利用者に提供していた。PC房の利用料金は1 時間当たり1,000ウォン(約100円)で、韓国国民は早くからPC房によるブロードバンドサービスに慣れ親しんでいた。
そのため、韓国での高速ネットに対する需要は高く、政府主導のADSLなどの高速環境導入策がスムーズに市場に溶け込むことができたと考えられる。また、集合住宅の多い国柄もブロードバンド接続の普及に効を奏している。
次に、そのブロードドバンド環境を活かした無料電話サービスや、インターネット放送などのサービスの存在が需要の拡大を呼び起こしている。それに伴い関連事業/裾野産業も著しい成長を遂げており、韓国のIT産業発展にとって好循環になっている。

 

インターネットアクセス方法

インターネット産業の成長が著しい韓国だが、市場はまだダイヤルアップなどのナローバンド接続が圧倒的である。ただ、ブロードバンドサービスの普及率は他国より高く、ADSLにいたってはインターネット先進国の米国よりも高い普及率を達成している。
また、利用者の選択肢も多く、内容が充実している。ブロードバンド接続では、ADSLとCATVが市場を分け合っている状況。

 

ブロードバンド市場

ADSLなどのブロードバンド接続が導入されて以降、韓国のインターネット産業の成長率は目覚しい。下記はその推移を表したグラフだが、ブロードバンド接続の成長率の高さを認識できる。

 

ADSLサービス

韓国のADSLはDMT(デイスクリート・マルチトーン)方式を採用しており、1.5Mbpsと1.5~8Mbpsの2種類のサービスを提供している。伝送距離は4kmだが、2.5kmまでは8Mbpsのダウンストリームが可能。現在、Korea TelecomHANARO TELOCOM、DREAM LINEなどがADSLサービスを提供している。
下記はHANARO TELOCOMが提供しているサービスであるが、日本のADSLサービスよりパフォーマンスが高い。

[HANARO TELOCOMのADSLサービス]

 

サイバーマンション

韓国では、全国民の40%以上がマンションなどの集合住宅に住んでいるといわれており、ソウルなどの大都市に行けばその比率はさらに高くなる。そのため、韓国でも日本と同様にインターネットマンションの普及が急拡大している。ただ、日本のそれとはパフォーマンスが全く異なる。日本では多くのマンションが 128kbpsの専用線を使って"高速で常時接続"を謳っているが、韓国はMbpsクラスで常時接続ができる。料金は日本のインターネットマンションの平均価格より若干高い程度。全てを同じにして比較することはできないが、両者の有意差は歴然である。

 

 

My Opinion

韓国国民の一人当たりのGDPが6,829US$であることを考えると、ADSLなどのブロードバンドサービスは決して安い買い物ではない。しかし、そのパフォーマンスと利便性の高さが需要を支えているものと思われる。つまり、利用者が支払うADSL料金以上の価値をそこから得ることが可能なのである。実際、韓国のユーザーはインターネット電話などのサービスを当たり前に使用している。

日本も韓国に遅れを取らないために、"e-Japan"構想などを含む「IT革命」を標榜している。国内では内容に関して賛否両論あるが、まず国民が当たり前に常時接続型の高速インターネットを安価に利用できるというコンセプトは必要だと考える。数値的目標はあくまで目標であって、必須項目ではない。また、日本が持っている潜在力は携帯電話で実証されているように世界トップレベルであり、インターネットにおいても、近い将来それが実現されると思う。これについては米国経営学者のP.F.ドラッカー氏も同意見で、現在の日本のIT事情に心配はないと言っている。

今回の韓国の成功は、"国民が当たり前にインターネットを利用できる環境"を整備することの重要性を教えてくれたと思う。そう言った意味では、マレーシアも学ぶべきことが多い。現在、マレーシア政府はMSCなど上位レベルでのIT 政策には積極的だか、一般ユーザーレベルへの普及活動は大変緩やかである。翻って、IT政策で成功している韓国やシンガポールを見ると、一般ユーザーレベルへの普及活動を積極的に行っていた経緯がある。そのため、マレーシアのIT政策には不安な一面が見えてしまう。

 

 

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